お子さまが、なかなか日本語の本を読まない、そもそも本を読むのがあまり好きではない、というお母さま方からの悩みをよく聞きます。そんなお子さまに、夏目漱石や芥川龍之介のような作家の「名作」を勧めるとかえって、本が嫌いになってしまいます。
まず、読みやすい本で読書の面白さを知ってから、少し古い作品にもチャレンジしてもらうといいですね。先月、国内生向けのHPに、こんな記事を書きました。海外赴任をしているご家庭にも参考になるかと思います。是非こちら↓もご覧ください。
入試に出題される物語は子どもが主人公
お子さまが本を好きではないなら、またどんな本を読むべきか分からないなら、最近の中学入試や高校入試の国語で出題された本を選んではどうでしょうか?
入試に出題される物語文は、ほとんどの場合、小学生から高校生までの子どもが主人公なので、登場人物に感情移入しやすく、楽に読めます。
また、出版されてから数年以内の新しい作品が多いので、内容がすっと入ってきます。
昔の日本を想像するのはハードルが高い
海外生活の長いお子さまは、「日本の日常」も想像しなければいけません。ここ数年はコロナで一時帰国すら難しかったですし、一時帰国も、いつも「夏休みか年末年始」の同じ時期になってしまいます。
例えば春休みころにテレビニュースで桜の開花前線を扱っていたり、新年度が始まったりして、なんとなくソワソワする日本の日常を体感することはできません。
日本の現代の日常も実感がわかないのに、スマホどころか携帯電話もない時代の物語を読んで場面を想像したり、登場人物の心情を想像するのは、ハードルが高いです。
中学入試や高校入試に出てくる作品を読むと、日本の同年代の子どもたちがどんなことで悩んでいるのか、どんな生活をしているのかを知るいい機会にもなります。
入試で出題される作品は、子どもの成長物語が多い
中学入試、高校入試で出題される作品は、先ほども書いたように子どもが主人公であるだけでなく、その主人公が何かの経験を踏まえて「成長する過程」を描いたものが多いです。
成長を疑似体験できるのもお勧めの理由です。色々な学校でどんな作品から出題されたのか、まとめサイトなどもあるので、調べてみてくださいね。
はじめてだらけの夏休み
さて、2022年度の私立中学入試の国語では、どんな作品から出題されたのかな?と調べてみると、筑波駒場中学の入試では、唯野未歩子さんの「はじめてだらけの夏休み」(祥伝社)から出題されていました。
この本は生徒から面白いと聞いて、数年前に読んだことがあります。久しぶりに引っ張り出して読み返してみました。表紙にはタイトルの下に「大人になりたいぼくと、子どもでいたいお父さん」とあります。ちょっと面白いかも、と子どもが思いそうなサブタイトルですね。
陽太は九歳の小学生。ある日家に帰ると、母はいなくなっていた。代わりにめったに家にいない録音技師の父が一緒に夏休みを過ごすという。最初は父を拒絶していた陽太。だが、土鍋で炊いたごはん、まっすぐ進む遊び、「雪の音」をつくる手伝いなど、経験をしたことのない日々に陽太は夢中になっていく。このまま一緒にいたいと思っていたけれど・・・・・。父と息子のひと夏の物語。
「はじめてだらけの夏休み」裏表紙より
子どもらしくいられなかった陽太と、子どもっぽいお父さんとの距離が近づいていき、ともに成長する様子は、大人は大人の立場で、子どもは子どもの立場で読み進められます。物語が苦手な小学生の男の子にもおすすめです。
重松清さんの作品もお勧め
中学入試ではお馴染みといえる重松清さんの作品数もお勧めです。とても読みやすい文章で、1963年生まれの男性作家が書いたと思えないほど清々しく、子どもの揺れ動く気持ちや思いが伝わってきます。構成も良く練られていて読みごたえがあるので、入試に頻出なのでしょうね。
中学入試の定番には「小学5年生」「きよしこ」「ポニーテール」などがあります。作品は多いので、色々調べてお子さまが興味のありそうな本や、主人公とお子さまの年齢が近いものなどを選んでみてくださいね。
1年ほど前に小学生の女子生徒の保護者に「先生、うちの子におすすめの本は何かないですか?」ときかれて、重松清さんの「さすらい猫 ノアの伝説」を紹介しました。
ファンタジー好きな女の子におすすめです。
子どもの付き添いのつもりで行った名探偵コナンやドラえもんの映画を見て、大人の方が「感動した!」なんてよく言いますが、児童書も意外と楽しめます。お子様に本を読ませたいなと思ったら、ぜひお父さん、お母さんも一緒に読んで楽しんでみてくださいね。