立命館宇治中学校 2023年度入試の過去問題を、先日立命館宇治中学高校の先生が教室に持ってきてくださいました。その際に2023年度入試結果をまとめた記事はこちらです。
中学入試、国語の出典は岩城けいの「サウンド・ポスト」
立命館宇治中学の2023年度入試(国内一般生)の国語、文学的文章の問題は岩城けいさんの「サウンド・ポスト」から出題されていました。2022年の夏に出版された新しい本です。
(メグは三歳でフランス人の母親を亡くし、日本食レストランを営む父親とオーストラリアで暮らしている。バイオリンの才能のあるメグは、六年生の時に私立学校の音楽科に推薦され、体験入学をすることにした。)という説明とともに、体験入学の様子から出題されていました。
メグは父親と英語で話すので、日本語はほとんど分かりません。外国語として「ジャパニーズ」を学ぶ授業で、日本人のメグなら当然日本語を話せると思った先生に、日本語で早口で話しかけられた場面です。
読んでほしい場面は多いが、小学生には難しい…
メグが主人公の児童文学かと思いましたが、「サウンド・ポスト」を取り寄せて読んでみると、1人親で娘を育てる父親の葛藤や、巣立っていく娘への思いも描かれていて、小学生には難しそうです。
それでも、異文化への戸惑いや、言葉の壁など、海外で暮らすお子さまに読んでもらいたい場面がたくさんあります。調べてみると岩城けいさんは、「MASATO」という作品で、2017年に坪田譲治文学賞を受賞していました。
※坪田譲治文学賞は「大人も子どもも共有できる優れた作品」が対象
MASATO
作品の主人公は十二歳の真人です。お父さんの海外赴任に伴い家族4人でオーストラリアで暮らし始めます。真人の成長と自立がテーマの物語です。
「スシ! スシ! スシ!」 いじめっ子エイダンがまた絡んでくる……。
「MASATO」裏表紙より
親の仕事の都合でオーストラリアに移った少年・真人。言葉や文化の壁に衝突しては、悔しい思いをする毎日だ。それでも少しずつ自分の居場所を見出し、ある日、感じる。
「ぼくは、ここにいてもいいんだ」と。
ところがそれは、母親との断絶の始まりだった・・・。
異国での少年と家族の成長を描いた第32回坪田譲治文学賞受賞作。
海外赴任に帯同し、現地校やインターナショナルスクールに通うお子さまには共感できる部分がたくさんあるはずです。「MASATO」は海外在住の日本人小学生にも、お母様、お父さまにもお勧めです。
母親との葛藤
「MASATO」には、どんどん英語を話せるようになり、現地に馴染んでいく子どもを持つ母親の複雑な思いも描かれています。
日本に帰ったときのために日本語補習校で学ぶべきだという母親と、土曜日はサッカーチームで英語を話す仲間たちとサッカーに打ち込みたい真人、2人の溝はどんどん深まります。
父親と母親の意見の食い違いも描かれています。今まで、面接対策やカウンセリングで海外で暮らす子供たちの苦労や葛藤、それを乗り越えた成長の過程など、生徒たちから色々な話を聞いてきましたが、お母さんも本当に大変だと、あらためて感じました。
まずは保護者が読んでみよう
保護者の方に「子どもにお勧めの本はありますか?」と聞かれることが多いです。試しに読んでみた「MASATO」でしたが、読んでいくうちに、私自身が作品の世界に引き込まれていきました。
帰国生のご家庭と関わる仕事をしているため、特に共感しやすかったのかもしれませんが、一気に読んでしまいました。
もし、「MASATO」に興味を持たれたら、是非、まずは先にお母さん、又はお父さんが読んでみてください。
次にお子さまに勧めてみよう
お母さん、お父さんが読んでみて、面白いと思ったらお子さまに勧めてみてください!
海外で暮らす日本人の子どもが主人公だから、立命館宇治の入試で出題された作者の本だから、ではなく「面白かったから」というのがポイントです。
興味を持たなければ、読まなくていい
「お子さまに勧めてください」、と言ったものの、読書は無理強いされると楽しめません。お子さまに読ませたい本があれば、読みたいと思ったときに、いつでも手に取れる状態にしておく感じがお勧めです。
また、お勧めできそうな本があったら紹介していきます。