先日、立命館宇治中学・高校の国際入試が実施されました。 入試センターの先生、受験した生徒たちからのお話を元に、傾向と対策をお知らせします!
立命館宇治中学・高校の「小論文試験」とは?
立命館宇治中学高校の小論文で問われる内容も読解力・批判的思考力・論述力となり、(以前のような)文学的表現力の色合いは薄くなりました。問われていることに対してより的確に論理的に考え、自分の主張を組み立てる形になりました。
傾向を探ろう!
<傾向➀>新聞記事・雑誌記事からの抜粋
立命館宇治中学校国際入試のサンプル問題では「毎日小学生新聞」から、立命館宇治高校国際入試のサンプル問題では「ナショナルジオグラフィック」からの抜粋文章が出題されています。学校のホームページで公開されているので、まずはサンプル問題をプリントアウトして確認しながらこの記事を読んでみてくださいね。「読解力」「思考力」をチェックできる新聞・雑誌記事からの出題は最近の風潮でもあります。
<傾向②>2部構成になっている
立命館宇治中学・高校国際入試A方式の小論文(作文)試験は2部構成になっています。 中学校と高校で大まかな問題構成は異なりませんが、出題方法が異なる部分があります。
以下で詳しく見ていきましょう。
➀設問パート
前半は記事・コラムの文章を読み、問題に答えるパートです。 「文章内容に関する選択問題」「語句に関する問題」そして「文章内容についての記述問題」から成っています。
A:「文章内容に関する選択問題」
中学校・高校ともに出題されています。一見悩ましい選択肢もありますが、すべて本文中に正答があります。
先入観なく、本文を読んで正答を探しましょう。
B:「語句に関する問題」
中学校の場合は選択問題で、「再認識」「悲惨」など日常的に使う言葉から「先がけ」「仮設病院」などのあまり聞きなれず、使わない言葉まで幅広く問われています。それに対して高校は、記述問題で「把握」「仕草」などあまり難しい言葉はありませんが、自分の言葉で説明できる語彙力が必要です。
普段なんとなく使っている言葉でも改めて問われると難しいものです。日ごろから活字に触れて、語彙力を強化しておきたいです。
C:「文章内容についての記述問題」
中学校・高校ともに出題されており、高校は中学校に比べると倍の分量を占めています。
中学校・高校ともに「本文の内容を参考に」意見を書く問題、本文内容から抜き出す問題が出題されています。
どの問題も受験生の読解力を問うものに変わりありませんので、「何について」書かれた文章で「作者が言いたいことは何か」を考えながら読んで答えを出しましょう。
②小論文パート
後半は問題文に関する題材についての小論文パートです。
中学校・高校の小論文テーマを見てみましょう。
中学校
「フローレンス・ナイチンゲールは彼女が生まれてから 200年後も人々の記憶に残っています。なぜなら彼女が社会を大きく改善させたからです。あなたの知っている人でも有名な人でもかまわないので、 社会をよりよいものに変えて、長い間人々の記憶に残るような人 について600字から800字にまとめて書いてください。 なぜその人が記憶に残るのか、例を挙げて説明してください」
高校
過去20年間で多くの人々が大学でオンラインでの学習を経験してきました。 将来、あなたはそのような教育(=オンラインでの教育)を受けることを選択しますか。 なぜそのように思うのか、 オンライン学習の利点と欠点を挙げ ながら1000字から1200字で述べなさい。本文に書かれている内容を参考にすること」
中学校の小論文では、「〇〇の分野で△△△をした(している)□□□さん」と詳しく、記憶に残るであろうと考える理由とともに書かなければなりません。しかもその理由はただ「かっこいい」「カリスマ性がある」というものではなく、読み手を説得させられるもの(「井戸がなかった地域に井戸を作り水を簡単に手に入れられる状況に変えたから」など)が必要です。
日ごろからニュースや新聞等に触れて知識を増やしておくと安心です。
一方、高校の小論文は「オンライン学習」について受験生の意見を問うものになっています。問題文にもあるように「オンライン学習の利点(良いところ)と欠点(悪いところ)」をそれぞれ挙げた上で、自分は「受けたい/受けたくない」と書くと良いですが、こちらも中学校同様、読み手を説得させられる理由が必要です。問題文にも「本文の内容を参考に」と書かれていますので、本文をしっかり読んで理由付けしてみましょう。
小論文の構成については後ほど触れます。
受験までにやっておきたいこと
①日頃から新聞記事・コラムに触れよう!
先述のとおり、入試問題に新聞や雑誌記事を使う学校が増えています。入試本番で戸惑わないように、日頃から新聞・コラムに目を通して慣れておきましょう。
実際手に取って読むのが難しい場合は、デジタル版の新聞や新聞記事がまとめられている『入試に勝つ新聞記事(浜学園、駿台・浜学園、読売新聞教育ネットワーク事務局編集)』をお勧めしています。
「大人が読む新聞は難しい」という方には朝日新聞・毎日新聞・読売新聞が発行している「小学生新聞」や「中高生新聞」をお勧めします。
新聞・雑誌記事、コラムを最大限活かす方法
1.難しい言葉を調べて理解する
新聞・雑誌記事に使われている難しい言葉は必ず意味を調べて、まとめておきましょう。
2.書き写す/要約する
コラム欄(朝日「天声人語」読売「編集手帳」など)を 「制限時間を決めて」「原稿用紙の使い方にそって」「一字一句間違わず」 書き写すよう、心がけてみてください。書くスピードと正確性を意識したトレーニングになります。
書き写しに慣れてきたら「要約」をしてみましょう。「誰が」「何をした(する)」というような主語・述語を見落とさないようにするのがポイントです。天声人語はだいたい600字程度ですので、はじめは400字程度で、その後、300字→200字→120字と字数を減らしましょう。要点がまとまった文章を書くトレーニングです。
3.親子で話し合う
ニュースの内容について、ニュースの概要、疑問に思うこと・自分の意見などを親子で話し合ってみましょう。
新聞記事はどれも参考になりますが、特におすすめなのが「投書欄」です。
作文・小論文を書く際には1つの物事を多面的に見ることが必要ですが、それを考えるのも文章にするのも難しいものがあります。投書欄には様々な立場での「賛成/反対」が寄せられていますので、それを参考にして意見を出し合ってみましょう。
②本を読もう!
読解力・語彙力UPのため、日ごろから本を読むのもおすすめです。
作者や登場人物の考えを読み取る練習にもなりますし、歴史や伝記であれば小論文に使える内容が書いている可能性もあります。
③小論文を書く練習をしよう!
小・中学生では読書感想文など「作文」を書く機会があっても、「論文」を書く機会があまりありません。
「作文」と「小論文」は大きく違いますので、注意が必要です。
〇作文:単に「自分の考えを相手に伝える」ためのもの。読み手を説得する必要はない。
〇小論文:「論理的に」自分の考えを述べるもの。読み手を説得するための理論が必要。
そして、小論文には基本的な構成が決まっています。
このパターンに合わせ、様々なテーマに対して自分の意見を論じる練習をしましょう。
テーマはぜひ新聞・ニュースから探してくださいね。
➀序論(全体の5~10%程度)
テーマに対する自分の意見(これから取り上げる点/賛成・反対等)を簡潔に書く。
②本論(全体の80%程度)
序論に書いた内容を深める。
読み手を納得させるための「体験」「具体例」、文章中のデータや調査結果など を使って、自分の意見の正しさを筋道立てて説明する。考えられる反対意見についての反論もここに書いていいが、その際は感情任せにならないように注意が必要。
③結論(全体の10~15%程度)
序論で示した自分の考えをもう一度まとめ直して書く。
いきなり小論文を書くのは難しいものです。
練習の際にはまず、構成を気にせずテーマについて思うことをなんでも書き出してみましょう。
書き出してみると自分の意見が見やすくなります。それができたら、その意見の根拠となりそうな体験談・具体例を考えてみてください。
日本語小論文は内容はもちろん、漢字等の語彙力、原稿用紙の使い方なども大事です。
しっかり練習して本番に臨みたいですね。