お悩み相談 算数・数学編

これまでにお話しさせていただいた、海外在住の保護者様・生徒の皆さんのお悩みのうち、多くの方々から寄せられた数学に関するお悩みに、実際の授業を担当している講師がお答えします!​

日本と海外の数学のアプローチの違いはお子様はもちろん、保護者様も戸惑うところだと思います。

まずは、”戸惑う点”について、お話いたします。

計算に対する力の入れ方が違う

日本式の算数・数学と海外式の算数・数学には大きな違いがあります。日本では大学入試まで手計算が主流なので計算にも力を入れますが、海外ではそうではない(中学・高校になれば計算機を使う)ため、あまり計算に力を入れません。そのため、海外には「中学・高校生であっても計算が苦手」な人が多いと聞きます。

計算力を付けておこう

日本の小学校では今でも計算の宿題が毎日のように出ます。いずれ帰国するのなら国内の子供たちと同等の計算力を付けておきたいです。

計算練習に使えるドリルやサイトをいくつか載せておきます。計算は練習をすることでスピードと正確さが上がります。自宅で計算練習をする際のポイントは「計算過程をしっかりと書き残すこと」「間違った問題を正解するまで何度でも解きなおすこと」です。

時間も計り記録しておくとスピードがついていくことが実感できますし、どれくらいの問題量でどれくらい時間がかかるかの目安がつかめるようになります。

計算練習にオススメのアプリ

トド算数(無料)

幼児から小学2年生までが対象のアプリです。

1日15分程度の学習で、子供たちにも無理なく続けることができます。

ゲーム感覚で楽しく、算数の基礎を学ぶことができます。

数学検定・数学計算トレーニング(無料)

数学検定を受験するかに関わらず、計算力をつけたい方におすすめです。

  • 数学検定7級 小学5年生レベル(中学生の復習用)
  • 数学検定6級 小学6年生レベル(中学生の復習用)
  • 数学検定5級 中学1年生レベル
  • 数学検定4級 中学2年生レベル
  • 数学検定3級 中学3年生レベル

毎日のドリル

学研『毎日のドリル』シリーズ専用の小学生向け勉強管理アプリです。
勉強をがんばると、選んだキャラの「ひみつ」や「ワザ」が増える!
ドリルが1冊終わるごとに、キミにぴったりの称号や賞状がもらえる!
『毎日のドリル』シリーズ全68冊を管理!
どのドリルを、いつどこまで勉強したのか、何点だったのか、全部見られる。小学生に人気のドリル「毎日のドリル」のアプリ版です。1日1ページという手軽さも魅力です。

計算練習にお勧めのドリル

蔭山メソッド徹底反復100マス計算

「百ます計算」とは縦・横に10こ並んだ数の交わるところに答えを書き進める計算トレーニング法。

いろんな問題を解くより、同じ問題をくり返し、速く正確に解けるようにすることが大切です。

計算力をつけるのに効果的なテキストです。

徹底反復シリーズ 蔭山メソッドforキッズ

一ます計算→十ます計算→三十ます→五十ます→百ます計算へと、無理なくレベルアップできます。

『くもんの小学ドリル』シリーズ

理解の道筋にそって、少しずつ、自然にレベルアップしていく独自のステップで無理なく効果的に学習をつづけられる。同じレベルの問題をくり返し練習していくことで力がつくように、問題の配列を工夫されています。

九九や計算のアプローチ方法が国によって違う

日本では小学2年生のときに語呂合わせで暗唱する九九ですが、海外では語呂合わせがやりにくいためか暗唱はしません。その代わりにMultiplication Tables(日本でいう九九表のようなもの)が教室内に貼っており必要なときにはそれを見ることになっている学校やMultiplication Tableを丸覚えさせる学校もあるようです。また、ドイツなどでは「問題演習を繰り返して九九を覚える」ようです。

九九の覚え方は様々ですが、最終的に「九九を使いこなせる」ようになることが重要です!

2桁×2桁計算の考え方も違う

日本と海外では計算方法も異なります。

たとえば小学3年生で習う「2ケタ×2ケタ」の計算も、日本と海外ではこんなふうに考えかたに違いがあります。暗算をすることもあります。

ⅰ:日本

ⅱ:アメリカ

例のような100に近い数同士であれば計算がしやすいかもしれませんが、100から遠い数になればなるほど、計算がややこしくなります。

このように面積を使って考える方法もあります。掛け算の意味がわかりやすくなっています。

ⅲ:インド

線の交点を数えるこの方法は九九を知らなくてもかけ算ができるという点で画期的ですが、98×64など大きな数のかけ算になると大変です。海外の考え方、日本の考え方、両方を知っておくと色々なアプローチで理解出来ていいですね。

算数あるある、分数の読み方や文章題のお悩み

分数の読み方

文章題日本ではこれを「3分の2」といいますが、欧米では「two-third」と読みます。この読み方の順番の違いも、帰国生が戸惑うことの一つです。「帰国してからの授業で欧米的な読み方をしてクラスメイトに笑われた」というお子さんもいますので、ぜひ知っておいてください。

文章題のイメージがつかめない

文章題がその国の慣習や環境に合わせて作られているのは日本でも海外でも同じです。

実際授業を担当している生徒さんで日本の文章題を解いている際に「問題設定がわからない」と頭を悩ませる子もいます。

授業では文章内容がイメージしやすいように日本の学生生活についてお伝えしますが、日ごろから本を読むなどして、日本の生活・慣習についてある程度の知識を入れておくことをお勧めします。

単位の違いでイメージしづらいことも

それに加え日本と欧米では使われる単位も違い、イメージしづらいという声も聞きます。単位変換表を載せておきますので、文章題を解く際に役立ててください。

日本の算数・数学は公式を暗記して使いこなす。

海外と日本では授業の仕方も異なります。例えば図形の体積の授業で、海外では<体積=底面積×高さ>の公式を、なぜそうなるのかを考えることを重視しますが、日本では公式を使いこなすことを重視します。

海外のテストには公式があらかじめ列挙されていますが、日本のテストに公式は載っていません。日本のテストは問題数も多いです。そのため、海外で学習しているお子さまも、たくさん問題演習をして公式が使えるようにしておきたいです。

海外の算数・数学はグループワークも多く思考量重視

海外の教科書は日本の教科書と比べると分厚く、実例が多くて応用問題などは少ないように感じます。実例が多いことで数学が身近なものに感じられるのではないでしょうか。

生徒に話を聞くと、現地校の授業では教科書の全ての内容を扱うことはないそうです。難しい問題は「先生に教えてもらう」のではなく「友達と話し合って解答を見つける」のだとか。「興味を持ったら自分で追求して答えを導きだそう!」という海外の教育姿勢が見て取れます。担当している生徒たちは、自分の学年よりも先の内容をどんどん学習しています。

思考力を重視した授業に戸惑う子供も

日本から海外に行かれて間もない頃は、思考力を重視した現地校の授業に戸惑うこともあります。まずは慣れ親しんだ日本語で取り組むのもお勧めです。

「思考力」「表現力」を高めるお勧め教材

近年、日本でも「思考力」「表現力」を重視する動きが広がっており、そのための本もたくさん出版されています。その中でも「数的感覚」「思考力」を意識した本をいくつかご紹介します。

触って学べる算数図巻

足し算、掛け算、分数から、図形や立体まで、算数に関する様々なことを、しかけを通して体感できる図鑑です。

説明を読んだり計算したりするだけではわからなかったことも、いろいろな種類のしかけを使って直感的に理解できます。

動かす・開ける・組み立てるなどの行動を通して、数や図形がどのようなものなのか、実感できる本です。

『算数と国語を同時に伸ばすパズル』シリーズ (宮本哲也 著/小学館)

考える力、試行錯誤する力を育てるパズルです。

推理パズル、数字ブロックが交互に入っていて、算数力も国語力も伸ばせる仕掛けになっています。

『考える力が身につく!好きになる算数なるほど大図鑑』

両手を使って計算する九九や誕生日を当てる電卓マジックなど、学校では教えてくれない、おもしろい算数や雑学が盛りだくさん!倍数を当てるクイズや図形のパズルなどもあり、親子でも楽しみながら算数の理解を深められる一冊です。

日本の教科書で算数・数学を学ぶときは準拠教材とドリルを使おう

日本の学習をする際に教科書で日本式の学習のポイント読んで理解したうえで、問題演習をしましょう。市販の教科書準拠教材は説明にスペースを割いていて、問題量が少ないものが多いです。そこで、準拠教材+ドリル・ワークの2冊使いをお勧めしています。

お勧めの市販教材

『教科書ワーク』(教科書準拠:文理)

オールカラー!教科書のポイントをカラーの表でまとめられています。

解説が詳しいのもおすすめポイントの一つです。

『教科書トレーニング』(教科書準拠:新興出版社)

オールカラー!目次も教科書に沿っていて使いやすい問題集です。

別冊解答に「解き方」のポイントが書かれているので、自学自習にも使いやすいです。

『くもんの中学基礎がため100%』(くもん出版)

「基礎固め」を重視したドリルです。

重要な内容は、少しずつレベルを上げながら繰り返し出てくるので、数学があまり得意でない方におすすめです。

『最高水準問題集』(文栄堂)

標準問題と最高水準問題の2段階構成。

最高水準問題は難関入試に匹敵するレベルで、教科書や標準的な問題では物足りない方に最適です。

解答を助けるヒントやくわしい解説があるので、挑戦しやすい構成になっています。

各単元を扱う導入学年の違いに注意

学習内容の違いを考えると資格取得を目標に頑張るのも良し

算数・数学検定もお勧め

自分の算数・数学力のレベルを知りたい場合は算数検定・数学検定の受験をお勧めしています。算数・数学検定で一定の級を取得していると、入試の際に加点または参考要素となるなど優遇措置の対象となります。海外の日本人学校でも受験できますので、資格取得を目標に学習するのもよいでしょう。

算数・数学検定受験の目安

※4級~6級で中学受験、5級以上で高校受験での優遇措置あり。

算数・数学検定おすすめテキスト

『親子ではじめよう 算数検定』シリーズ

解説、例題、練習問題の3ステップ!

保護者が教える前提で作られているので、教えるポイントがわかりやすい!

算数パークで頭の体操!計算練習のミニドリル付き!

『受かる!数学検定』シリーズ

出題傾向にあわせた学習内容。計算技能検定、数理技能検定に対応。

ステップ式で無理なく学習。正答率・制限時間つき。実物そっくりの模擬検定問題つき。

最後に

言語も情緒も未発達な状態で海外に渡り、日本とは言葉も生活様式も価値観も違う環境生活をおくるのですからは大変です。特に算数・数学は海外と日本では学習内容もアプローチの方法も大きく違いますので、戸惑って当然です。

しかし、子供の頃に日本式と海外式、両方の学習ができる機会は誰でも得られるものではなく、様々な観点から一つの問題に取り組める機会を得たお子様は最強の算数・数学マスターになる可能性を持っています。そのチャンスを活かせるよう、どちらも手を抜かずに楽しんで取り組んでもらえればと考えています。